2020/09/03
大阪府吹田市のお客様より古本の出張買取ご依頼いただきました。
「マルクスにおける経済と宗教」岩瀬文夫著
「新左翼運動の射程」廣松渉著
「木本幸造編著 社会科学概論」日本評論社
「生態史観と唯物史観」廣松渉著
「ムツゴロウのため息」畑正憲著
「どんべえ物語1 ヒグマと2人のイノシシ」畑正憲著
など 古書・古本等 30点程度
今回は、
「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦著 角川書店
をご紹介。
あまりぱっとしない「先輩」と気風のいい女学生「黒髪の乙女」が少し不思議な世界を入ったり出たりしながら進んでいく、4話の連作小説。
「これは私のお話でなく、彼女のお話である。」で始まりますが、「先輩」と「黒髪の乙女」が交互の視点で語っていく形でお話は進んでいきます。
お話の内容はまさに「彼女が酒精に浸った夜の旅路を威風堂々歩き抜いた記録」です。
第一話、「夜は短し歩けよ乙女」
黒髪の乙女が夜の街を歩き(飲み)歩き、不思議な人たちとの出会いを繰り返しながら、最後、高利貸しの「李白翁」を飲み比べで打ち負かします。
先輩は、黒髪の乙女とお近づきになるために後を付けていくのですが、いろんな災難に巻き込まれてしまい、最後は鯉に頭をぶつけてノックダウン。
第二話、「深海魚たち」
下賀茂神社の「古本市」で黒髪の乙女が幼いころ愛読していた絵本「ラ・タ・タ・タム」を手に入れるため、先輩が奮闘する。
古本市の神と名乗る少年も絡みながら、「ラ・タ・タ・タム」は黒髪の乙女の手元に戻ります。
「本はみんなつながっている」という言葉が印象的です。
第三話、「ご都合主義者かく語りき」
学園祭で繰り広げられる先輩の「ナカメ作戦(なるべく彼女の目にとまろう作戦)」と「韋駄天コタツ」、「偏屈王」事件が
入り乱れて、ごちゃ混ぜになって・・
キャストも開催場所も直前までわからないという、ゲリラ的に開催される演劇「偏屈王」がどのような結末を迎えるかが読みどころです。
第四話、「魔風邪恋風邪」
年末からはやり始めた怪しげな風邪はやがて京都中に広まっていく。
風邪にかからなかった黒髪の乙女は、大本である李白翁の風邪を治すべく糺の森にある三階建て電車を目指します。
黒髪の乙女がもってきたクスリで病状が落ちついた李白翁ですが、最後に一言「夜は短し、歩けよ乙女」そして咳一つすると黒髪の乙女は遠く飛ばされてしまいます。飛ばされていった先にはさて・・
先輩と黒髪の乙女それぞれの視点でからみあってテンポよくお話が進んでいくのは、森見さんの文章の上手なところです。
まさにご都合主義というような終わり方ですが、なんだかふわり幸せな気分になるお話です。